日常感想文 -読書/お金/経済等-

本や経済ニュース、株等について感じたことを書きます。

”転職の思考法”は会社というものに対する価値観を提示してくれる

 一部で話題の書となっている以下の本を読んだ。市場価値について基本的なことを丁寧に説明した良書であり、どちらかといえば現在転職を考えていない人にこそ読んでほしい本である。

このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法

 本書では、市場価値は"業界の生産性"、"技術資産"、"人的資産"の3つの要素の掛け算にて決まると主張している。個々の要素の詳しい説明はしないが、私はここで、"業界の生産性"という要素が市場価値という観点では重要であるにも関わらず、軽視されがちではないかと感じた。市場価値という言葉を聞くと、個人の能力、素質等に依存した何かのように聞こえるが、実際には環境としてどこにいるかというのも非常に重要だということである。つまり、おなじような能力であっても、業界によって給料が大きく異なる可能性がある。皆が皆より高い給料だけを求めて仕事をしているわけではないが、給料を考えた場合業界の選択は重要な要素となる。

 その他本書は市場価値についての説明をしてくれているのだが、私が本書を読んで得たことは会社との付き合い方に関する一つの考え方である。本書では会社に従属せずに生きていく"思考法"が提示されているが、実際には転職そのものを推奨しているという印象はない。ただ結局市場価値を考えずに仕事をしてきた人間にはいざというときには選択肢がなく、嫌な仕事でも続けざるを得ないという現実が示され、それを避けるための"思考法"が説明されている。

 そして私がこの本を読んで思い出したのが以下の言葉である。

「会社というものは自分の味方ではない。敵とまでは言えないが、少なくとも黙っていても会社が自分のために何かを施してくれるというものでは絶対にない。会社で自分の思いを通すためには、会社と個人は常に対等の関係になければならないし、さらに対等な上で日々これ勝負であり、これにある程度勝たなければ、自分の思いを遂げることは出来ない」(服部暢達 ゴールドマンサックスM&A戦記 -伝説のアドバイザーが見た企業再編の舞台裏 P.2)

 もしかするとこのような考え方は人によって馴染まないのかもしれない。しかしながら私はこのような考え方のほうが健全に感じる。会社であれ個人であれ、他者が「~してくれるだろう」という期待にもとづいた関係性というのは私にとっては不健康な関係に思えるのだ。このような考え方に共感が持てるのであれば、"転職の思考法"は読んでみて納得でき、参考になる部分が多いのでぜひ読んでみてほしいし、共感できなくても世の中にはこんな考えの人たちがいるのだなあという観点で得るものはあるはずなので興味があれば手に取ってみるとよいかもしれない。